> 稜山泊フォーラム>コラム>20070926

2007年9月26日のコラム
(バスの急停車で乗客が怪我した、乗客に責任有りとは?!)

皆さんはこの記事を見て、安心してバスに乗れますか?
 朝日新聞のWebで興味深いニュースが報じられていた。9月19日の記事である。 タイトルは、「バス急停止でけがは乗客にも責任? 名古屋地裁判決」である。 裁判の判決に疑問を投げかけるかの様なタイトルである。
 内容を見ると、確かに問題が多い判決である。
 まずは、経過を列挙してみる。(新聞記事をリライトしたものです)

・原告は60歳のご婦人。被告は、保険会社の社員2人と名古屋市。
・バスに乗っていた婦人は、バスが事故を避けようと急ブレーキを掛けた弾みで大怪我。
・婦人の被害額は約300万円。事故を補償する保険会社は、婦人が安全を確保していなかったと3割の過失を主張。
・婦人は、過失主張は不適切と、慰謝料と被害補償を求めて、名古屋地裁の控訴。
・判決は、婦人に1割の過失を求めた。さらに、保険会社の主張に裁量の範囲と慰謝料は認めなかった。

 一つ目、ここではっきりしているのは、婦人は、もう名古屋市営バスに乗りたくないであろう。 うかつに乗っていて怪我をしても、補償してくれる確証は無いのだ。 この記事を見た市民も同じ思いだろう。私も同じだ。
 二つ目、この記事を見て思った。尼崎JR脱線事故で多くの方が亡くなった。108人が亡くなった凄惨な事故だった。 正確な数値は掴んでいないが、例えば、4両目に70人が乗っていて、20人が亡くなったと仮定しょう。 問題の判決は、この亡くなった20人に「あなたは、正しく乗っていなかったので、他の50人より過失がある」といっているようなものだ。 誰もそんなことは考えないと思う。私も考えない。
 三つ目、この判決は、老人や肉体的弱者をどう考えているのだろうか。 バスには、「車椅子での乗車できます」などと、弱者への思いやりを宣伝している。 そう言っておきながら、「自分の身は、自分で守れ」ということは矛盾している。 こんな判決がまかり通るなら、私自身、老後にバスに乗るのが不安になる。 原告の婦人が60歳という年齢を考えると、運転手も保険会社も充分に思いやりを持つべきだと思う。

 判決に、クレームを付けることは出来ないが、この事件は、いくつかの教訓を示してくれる。 本稿の趣旨として、まとめます。
1 この様な事件で被害者となった場合は、最初から裁判に持ち込むのではなく、上記の問題点を明示し、バス会社の誠意に訴えるのが良い。 バス会社は、市バスとい言え、営利事業です。市バスなら福祉貢献の義務も負うべきだ。 駄目なら、市長に訴えることも可能です。増してや、保険会社を相手にしては駄目。 保険会社は、交渉のプロ。裁判で戦うなら、その道の優秀な弁護士を付ける必要がある。
2 バスの運転手は、乗客の安全を第一に考えることが必須。 周りからの影響と「安全」を盾にして「乗客の安全」を守らないのは、大きな矛盾である。 バスの全体に大きな責任を持ってもらいたい。
3 今回の判決は、法律を正確に適用すると確かに矛盾が無い判決だと思う。 しかし、常識や生活の知恵を兼ね備えた裁判官は、この様な判決を出すことは無いはず。 昔の「逆噴射」の様な裁判官は要らない。常識と良識をもって頂きたい。
 私自身、厚木のバスで、乗客を無視した運転手を見かけ、バス会社に通報した経験があります。 その経験と照らして、同じ様に憤りを覚えて掲載しました。
 ただし、この記事には、オチがあるかも知れません。本件をWeb検索すると、朝日新聞の記事しか出てきません。 しかも、朝日新聞の記事は、朝日新聞のWebから削除されています。 私は、判例検索が出来ませんので、当時の朝日新聞記事を頼りに掲載させて頂きます。

著作権とリンクについて個人情報とセキュリティについて /All Rights Reserved,Copyright Ryozanpaku Forum 2006-